ビクリ、として肩が強張る。


振り返るとまだ少しだけ髪の濡れた桐生秋十が、私を呼び止めた。



「結城の部屋はこっちだぞ?お前も来るんだろ?わけのわかんねぇ肝試し」


「行くけど……っ、その前に、ちょっと呼ばてて」


「は?呼ばれたって誰に?」


「え、と……」



山本くんになんて言えば、私は懲りないヤツだと思われるかもしれない。


……って。

私はなんでそんなことを心配してるんだろう。



「言えない相手?まさかお前が告白でもされんの?」


「違うよ……、」


「ふーん。あっそ。早く戻ってこいよな?」


「え?」


「ガキの時みたいに、また探しに行くようなことになるなよ?」


「……っ、」



ドクッと心臓が不快な音をたてた。



覚えてる………。


桐生秋十は、林間学校のあの夜のことを、覚えてるんだ。