恐る恐る聞いてみたけれど返事はなくて、ひたすら眉をしかめたまま沈黙を貫く。
「富樫さん、なに黙ってんのよっ!?」
ーーードンッ!
痺れを切らした彼女がひーちゃんの肩を強く押した。
あっ!と思って、咄嗟に砂浜でよろけるひーちゃんの肩を支えた次の瞬間には、怒りに震えた彼女の手が、宙を切るように振り上げられる。
私はひーちゃんの身体を引っ張り、その手を避けようとしたけれど。
…………あれっ?
怖くてつい閉じてしまった目をうっすらと開く。
そして、私は心の底から驚いた。
ーーー艶やかな、黒髪が視界に映ったから。
「日和のこと傷つけたら許さないよ?」
冷たく静かな怒りを宿す声。
一瞬、私は誰の声かわからなかった。
そこには彼女の手を掴んだ晴くんがいたから。
「晴……?」
ようやく声を発したひーちゃんは、晴くんを見るなり今にも泣きそうな顔をする。



