「それから笑顔なんて一度も見せなかった。ううん。笑えなかったのかも……でも、小三になって桐生くんが転校してきて……」
私より一年早く転校してきた桐生秋十。
「“笑いたいなら笑えばいいよ。俺は晴といたら笑ってばっかだよ”って桐生くんは言ったんだ……」
桐生秋十は誰かを救う言葉を持ってるんだね。
「わたしはなんにも出来なかったけど、桐生くんがいてよかったって思ってるの。あ、嘘かも。ほんとは、ちょっと悔しい……」
「く、悔しい?」
「うん。だって、わたしは……ずっと晴のそばにいたのにね」
情けないわ……と、やっぱり悲しく笑った。
「晴くんの力になりたかったんだね……」
晴、晴……って。
いつもくっついていたことを私は知ってるよ。
そんなに、悲しく笑わないで、ひーちゃん。
ーーーー“オレは日和一筋だよ”
晴くんは、今でも、ひーちゃんのことをーーー。



