「私、アイツがなに考えてるかも、全然わからないんだ……あんなに意地悪してきたのにって、どうしても考えちゃう時もあって……」


「意地悪………か、」



ひーちゃんの声がやけに寂しそうに聞こえた。



「ニーナはさ……桐生くんのことをどう思うの?今も……世界で、一番大嫌い?」


「えっ?」


「答えてよ。自分の気持ちに正直にさ……」


 
ひーちゃんの揺るぎない真っ直ぐな瞳。



「………嫌いじゃ、ない」



助けてくれたアイツの黒い瞳が、私を見つめて優しく緩んで。

その手に触れられた時、胸の中が温かさに包まれた。


大嫌いな大魔王に、こんな気持ちを抱いたのは初めてだったんだ。



「うん。そうだと思ったよ。わたし思うんだけど、桐生くんはどんな思いでニーナに声をかけたんだろうね?ずっと無視されるって、かなり辛いと思う……」