イタズラっ子みたいだ……。
だけど、私に何かを期待する瞳は変わらずに向けられている。
「ま、待って………」
「待てない」
「……っ、」
きみが隣にいて、呼吸が触れ合う距離にいる。
今までのことを思い返せばこの状況は本当にありえない。
なのに、距離にして、ほんの数センチ……。
そうやって、きみは、私に近づいてくる。
「“嫌いじゃない”……なんてお前の口からもう二度と聞けないかもしれないし?」
「……、」
その通り。
桐生秋十に対してぶつける言葉は、大嫌いがいつの間にか当たり前になっていて。
むしろ、それしかなくって。
私にとって世界で一番大嫌いな男の子。
だけど、だんだん近づいてくる桐生秋十は私が知らない一面を見せてきて、私の心の中に入ってくる。



