「なぁ?」



なんで、ちょっと嬉しそうにしてるの?

私が、嫌いじゃないって言ったことを確かようとしてて。

どうしてそんな甘い声で聞くの……?



「ちょっと、離れてよ……っ、」


「もう一回聞かせてくれたら離れてやるよ?」



だから、なに……その顔は……。

嬉しいことがあったみたいな顔してる。

お願いだから、そんな顔で見つめないで……。



もっと意地悪に、大嫌いな瞳で私を睨めば、こんなに胸がドキドキすることもないのに。


私だって、なんであんなこと言ったのか、自分でも上手く説明がつかないんだよ。



「仁菜、早く」


「っ、」



待ちきれないとでも言いたげに発した声。


そっと視線を上げると、微笑む桐生秋十が、やっぱり私を見つめ返してくる。