「その時のアキの顔、怖かった。アレ……アレみたいな顔」


「アレ……?」


「うん。ほら、蜷深がよく言ってる……」


「………だ、大魔王?」


「あっ。そうそう。それ。大魔王ね」



こんな風に晴くんと言葉を交わすことは初めてかもしれない。


くるりっと、身体をこちらへとやって、傘を高くした晴くんは私に視線を投げた。



「その時のアキは、大魔王って顔だった」


「え……?」



“その時のアキは”……。


傘に降る雨音に混ざって聞こえる晴くんの声は、唐突変化をみせて、まるで冷たい雨のように私へと降ってきた。



「ねぇ、蜷深。今のアキは?大魔王みたいな顔してた?」



無表情で無愛想な晴くん。


だけど、今はなんだか怒ってるような口調。