「あーあ。明日、風邪ひくかもね、アキ」


「は、晴くん……、」



桐生秋十が帰っていった方向に目を向けながら、取り残された晴くんは淡々と言った。



「でも、納得したかも」


「な……納得?」


「そう。アキ、イライラしてた。ずっと。帰り道はこっちじゃないのに、蜷深と山本が帰るところ見かけて、こっちまで早歩きしてさ」



あれは早歩きってより走ってたね、と付け足すように呟く晴くんの声に、私の心はギュッと締め付けられた……。



「こないだ山本が蜷深なら簡単に落とせるよなって、笑って話してたのが聞こえたんだよ。山本って、かなりのナルシストだね。あの顔で。家に鏡ないのかな?」



無表情の晴くんは声だけは笑っていた。


陰でそんなことを言われていた私にも、十分な原因はあるって、今さらながら痛感する。