ーーーとても柔らかい声だった。 目の奥が瞬く間に熱くなって瞬きをしたら、雨か涙かわからない滴が零れ落ちる。 「泣くなよ……」 「……っ、」 「お前が俺のこと嫌いなのは、わかってるけど」 そう言いながら笑みを零すと私にそっと傘を握らせる。 「でも俺は、諦めてやんない」 ーーードキッ それは、どんな意味がこめられてるの……? 雨に打たれる桐生秋十は、どこか切なげな表情をしてそう言うと、踵を返して歩いていった。