桐生秋十は今までにないくらい柔らかな表情をしていて、私の心はゆらゆら揺れる。
「ガキの頃から意地張りすぎだろ?本当は、泣きたいくらい寂しいクセに」
なんで、アンタがそんなこと言ってくるの。
なんで………。
「泣きたいなら泣けばいいのに。素直になれよ?」
世界で一番大嫌いなきみの声が優しく聞こえるんだろう。
たちまち目の奥が熱くなった。
泣かないって決めたはずなのにそんなことを言われたら、堪らなく泣きたくなってしまう。
ふわり、と。
桐生秋十の黒い瞳が優しく緩む。
再び伸ばされた大きな手は私の髪をそっと撫でる。



