「なんでそんな顔してんの?」
「そんな顔って、全然……ふ、普通だよ」
「普通じゃないだろ。お前はなんで父親の話が出たら、顔が曇るわけ?昔からずっと」
「っ」
私は子供の頃お父さんのことを聞かれるのがすごく嫌で、その度に顔が強張っていたのを今でも覚えてる。
まるで、本当にずっと私を見てきたみたい。
アパートの前で向き合う形になった私と大魔王を紫色の空が包む。
賢いルルちゃんは、ちょこんとご主人様の足元にお座りしている。
「思い出したくない理由でもあるわけ?」
頭上から降ってきた声は苛立ってるみたいだ。
「……違う、」
飛びつくように顔を上げたけれど、全て見透かれそうな瞳に思わず俯いてしまう。



