だってあんなに意地悪だったのに……。

さっき頬に触れられたからなのか顔が熱い。

沈黙が苦しくて何も言えない。


もう耐えれそうになくて、ガバッと勢いよく立ち上がった。



「だったら、そうやって俺のことばっかり考えて困ってれば?」


「……っ、」 



背中に響いた挑戦的な台詞。

だけど、その声は少しも意地悪く聞こえなくて。


私は、ずっとずっと困ってるよ………。


桐生秋十は良くも悪くも子供の頃から私の心の中に居座り続けていて、いつだって私の悩みの種だもん。


いつもみたいに言い返したいのに当然ながら言葉は何一つ出てこない。