ちら、と少し遠い宮ちゃんの席に振り向くと、気付いた彼女は｢珍しい｣と言いたげな顔をした。

だけど何かを思い至ったように、にやっと微笑んで、人差し指で宙にハートマークを描いた。

そしてにやにやと笑うから、慌てて前を向いた。

恥ずかしい。

顔に熱が集まってゆくのを感じて、また熱くなる。

( ……相良君 )

この感情に当てはまる名前を、私はよく知らない。

だけど。

彼に対するこの気持ちが、そうならいいと思う。

( 屋上に行くって言ってたっけ……本当にさぼってるのかな )

ちらちらと屋上を見つめてしまう。

これって、ちょっとストーカーみたい？

……いや、あれは不可抗力で聞こえただけだし。

心の中で悶々と、一人で言い訳を連ねているうちに、｢あれ？｣と気付く。

( ……屋上って立ち入り禁止だったよね )

先生にばれないように、こっそりと向かいの校舎の屋上を見つめる。

三階だからか、屋上の低いフェンスがそう遠くなく見える。

流石に普通科でも、立ち入り禁止の屋上には来ないだろう。

……とは思わず。

案の定。

開かないはずの屋上の扉が開いて、中から何人かが頭を出した。

｢あ……｣

総勢約七人。

堂々と走り回る彼らの姿に、予想していたものの、全く関係の無い私の方が慌ててしまう。

( み、見つかっちゃうのでは…… )

向かい側の屋上は、特進科の校舎からは良く見える。特にここは三階だ。

少し見上げれば、そこに。

( あ…… )

その中に、彼の姿を見つけた。

走り回る友人らしき人達を、低いフェンスに凭れるようにして眺めている。

こちらに背を向けているのに、一目で彼だと分かったのは、今朝の印象が後ろ姿だったからかもしれない。

顔、ちゃんと見てなかったけど。