「で、でも本多くんって忙しいでしょ?止むの待ってたら時間もったいないよ」
空を見るふりをして本多くんから距離を取るつもりだったのに、
「あんまりそっちに行ったら濡れるよ」
すかさず、冷たい手がさらにあたしを引き寄せる。
「っわ、」
驚いた反動で、持っていた紙袋が手を離れて床に落っこちた──
「おれも下の名前で呼ぼうかな」
「へ?」
脈絡のない言葉に固まった矢先。
「──“萌葉”ちゃん」
「…っ」
余裕たっぷりな表情でそんなことを言って。
異性に慣れたこの人は、きっと、あたしの反応を見ながら楽しんでるんだと思った。



