危ない目……?
なんの話?どういうこと?


「こっち。ついて来て」


疑問に思いながらも、手を引かれれば素直に従うしかなく。
心なしか緊迫した空気の中、ふたりで廊下に出た。


ふたり、のはずなのに、廊下に響くのはあたし一人の足音だけ。


音を、殺して歩いてる……?


事情はさっぱりわからないけど、あたしも“できるかぎり静かに”したほうがいいのかもしれない。
とはいっても、放課後の誰もいない空間には些細な音でも響いてしまう。


音を立てずに歩くなんて……無理だよ。


目の前にいる本多くんって、もしかして幻なんじゃ……。

なんて、しまいには馬鹿げたことまで考えてしまった。


クラス棟を照らす灯りを避けるように西階段から1階に降りて、外回りの廊下を進む。

やがて中央にある昇降口までたどり着いた。


警戒するように辺りを見回してから、彼はようやくこちらを振り返った。