自分の心臓が壊れたんじゃないかと、一瞬本気で心配になった。
可愛い、なんてさらりと言いながら。
それでもしっかりと甘い響きを孕んでいるあたり、かなりの手練に違いない。
毎日あたしが目にしている本多くんとは、声も雰囲気も、ずいぶんと違う。
いつもはわざと抑えているのか、ただならぬ色気を帯びている……ような。
少し長めの前髪からのぞく切れ長の瞳。
真っ黒……だけど、どこかきらきら、透き通ってもいるような。
見つめられると心地良いのに、鼓動はまるで落ち着かない。
「えっと、あたし……そろそろ帰らなきゃ」
それはもう不自然なほどに体ごと背けて、視界から彼を遮断した。



