「佳遥さん──七瀬のお父さんと俺は、ちょうど、一回り離れててね。俺は6歳のとき、西区の繁華街に捨てられた」
捨てられた。
なんでもないことのように言ってみせるけれど、ズキリと心が痛む。
「そんな俺を、佳遥さんが拾ってくれたんだ。行くところがないなら付いて来いって。そのときの佳遥さんは18歳、まだ高校生だった」
そんなに若い頃から……。
一体、どんな生き方をしていた人なんだろう。
もう知ることはできないけれど、本多くんと同じ優しい人なんだろうな。
中島くんは少しためらったような顔をしながら、もう一度あたしを見た。
「相沢さん。ふたりで話したいことがある」
「……あたしと?」
うなずいて席を立った。