ポケットの中でスマホが鳴った。
相手は灰田。
『さっきの銃声なんだよ。外部からか?』
「……、」
深川だ。
深川が銃持って七瀬を殺そうとしてる。
手を貸してくれ。
この男を止めてくれ。
叫びたいのに、すぐ近くに狂った化物がいるせいで口にできない。
なんて言えばいい。
どうすればバレずに伝えられる?
できるだけ声を抑えれば、
「灰田、頼みがある。 本多を……」
──ここから逃して。
言いかけたとき、
伸びてきた手が俺のスマホを奪い取った。
「もしもし、僕だよ」
銃を片手にした深川が機嫌よく言った。
「本多七瀬に、今すぐエントランスに向かうよう伝えて。予定より早いけど、一対一でやり合おうって」
俺に再び戻すこともせず電話を切り、部屋を出ていく。
慌ててあとを追いかけた。
もう……息ができなくなりそうだ。



