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すぐそばに人の立つ気配がした。

それから額に、ひやりとした、何か固いものを感じて目を開く。



それと同時。

視界に飛び込んできた物体に、心臓がドクッと跳ねあがった。



「っ……──」

一瞬で意識が現実へ引き戻される。


近すぎるせいで輪郭は見事にぼやけているけれど、目の前に立つ人物の影から、そして僅かな火薬の匂いから。

「それ」が何なのか、嫌でも分かってしまう。



──バレたのか?

体が硬直する。

冷たい汗が背中を伝った。



「さすがだよね琉生君。眠ってても警戒心はずっと働いてる」


銃口をこちらに向けたまま、冷ややかな声を放つ男。



「ずいぶん苦しそうだったけど、なにか怖い夢でも見てたの?」



動揺してはいけない。

───慎重に。



「……すみません。父さんが、殺された日の夢を見てて……」



弱々しい声を出しうなだれてみせる。



「ああ……そっか。ごめんね、辛いことを言わせてしまって」


深川の声が優しい響きに変わった。

銃をおろし、にこりと笑ったかと思えば。



「僕ね、ずっと考えてたんだ。悲しんでいるだけじゃ当然何の解決にもならない。自分を救ってあげるにはどうすればいいのかって」



そう言いながら、ゆっくりとした手つきでその銃を撫でる。

胸騒ぎがした。


俺の計画はバレていない。

だけど何かが──それを狂わすような、恐ろしいことが起ころうとしている。



「抗争で済まそうなんて馬鹿な考えだった。勝ち負けで人の心は救われない」



やっと気づいたよ、と目の前の男が笑う。



「邪魔なら消せばいいだけだ」