俺は「父親を殺された哀れな子供」でいなくちゃいけなかった。

鎮西会の人間は、みんな父さんを尊敬して、憧れて、崇拝していた。



仇を打ってくれたと、むしろ喜んで。

父さんを殺した、本多佳遥を憎み続ける。


まだ小さくて無力だった俺は、そうやって装うしかなかった。



反抗すれば殺される。

間違っても、黒蘭側の肩を持つようなことはできない。


幼かった俺は、殺された父さんの息子だという同情を、鎮西会の大人たちから買うことでしか生きていけない、本当に無力な存在だったから。




別に、死ぬのは怖くなかったんだ。

むしろこんな世界、うんざりだって、消えてしまいたいと思っていたくらいで。


だけど、可哀想な子を演じ続けてでも、生きなきゃいけない理由があった。



黒蘭会は頭を失った。

鎮西会は滅びたけれど、深川宗二は生きている。



七瀬の父さんの黒蘭が滅びたはずの鎮西会の汚い色に染められていく、地獄みたいな未来が見えてしまった。



死ぬのは今でも怖くない。

まだやらなきゃいけないことが残っているだけで。




これは俺のための計画だ。

優しい七瀬が

ずっと笑って生きられるように。




俺は

七瀬のためなら、死んでもいいよ。