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車内は重苦しい空気に包まれたまま、黒蘭の本部に到着した。

とても長かった気がするし、ほんの一瞬だった気もする。


車から降り、月明かりが照らす建物の全体像を捉えた。


青藍の倉庫もかなりのものだったけれど、ここは規模が違う。
校舎のように広く大きく立ちはだかっていた。



「中島〜、深川サンは先に着いてるんだっけ?」

「ああ、そういう風に聞いてる。けど……」



スマホをながめ、中島くんが首を傾げる。



「……着いたって連絡がない。どこにいるんだ……?」



一緒に乗ってきた他の3人もそれぞれのスマホを確認し始めた。



「……どうしたんすかね。指示がないと、俺ら動けねぇのに」

「俺から連絡を入れてみる。お前らはとりあえず中に入れ」


「中島さんは一緒に行かないんすか?」

「俺はまだ、ここにいることを本多に知られるわけにはいないからね……。裏口から入って様子を見る。必要があれば出て行くさ」



それは、本多くんはまだ、中島くんが黒蘭側にいることを知らないということ。



「だから灰田。とりあえずはお前が指揮とって」

「え〜面倒くさい責任被りたくない」

「こういうことには頭がキレるだろ」

「はいはい、お褒めにあずかり光栄で〜す」



気のない返事をしながらも、その顔つきは先程とは打って変わって真剣なもので。


「お前ら行くぞ」


中島くんの背中を見届けると、彼は覇気のある声を響かせた。