黒いワンボックスカーは既にエンジンのかかった状態で停まっていた。
「深川さんは?」
「総長は別の車で先に出られました」
「わかった。車には俺たちを除いてあと3人、それから7台バイクを出せ。本多が下手に動けない状態だからといって油断するな。残りのメンバーは第二基地の警護にあたれ」
中島くんの指示を受けたメンバーは速やかに自分の配置につき、次々と段取りが進んでいく。
それをぼんやりと眺める暇もなく手を引かれ、車に乗るよう促された。
「俺は最後に乗る。この女は……灰田が見張ってろ」
中島くんの手が離れると、指名された人物が隣に乗り込んできた。
名前に聞き覚えがあるような、と思ったのと、相手と目が合ったのはほぼ同時。
あっと声が出る。
「どぉも」
と、わずかに笑みを浮かべた口元が動いた。
「また会うなんてな」
──────灰田、くん。
この前カラオケ店で襲ってきた二人組の、ひとり。
「安心しな、牧野はいない。誰かさんのお陰で、今ごろ楽しい入院生活さ」
この前は助けてくれたようにも思えたけれど、飄々とした態度や真意の分からない言動ばかりで人柄が掴めない。
正直苦手だ、と思う。
「その誰かさんも今、窮地に追い込まれてるみたいだな?」



