片手にコンビニのビニール袋を下げた彼は、入ってくるなりそれをあたしに差し出した。
「こんなんで申し訳ないけど、腹は満たしておいた方がいいよ」
袋をのぞいてみると、お茶のペットボトルが1本と、おにぎりが2つ。
「……ありがとう」
「お礼なんて言われると心が痛むなー…。こっちは監禁まがいのことをしてんのに」
それでも、と思う。
「上着も、掛けてくれてたし」
「あーそれ。……着てていーよ。昼と違って夜は冷えるだろ」
今は、あくまでも優しい中島くん。
手紙のことはバレていないのかな、と後ろめたい気持ちになりながら表情を伺う。
見たところ変わった様子はないけれど、本当のことはわからない。
あたしが見たことに気づいていないのか。
気づいているけれど、気づかないふりをしているのか。
それとも、別に見られても構わないものだったのか。
どこから落ちたのか分からなかったあの手紙は、見つけたときと同じ位置に置いておいた。
今、床に落ちていないということは、中島くんが自分が落としたことに気づいて、拾ったのだろうけど。
「食欲ない?」
「えっ」
「気分が最悪なのは分かるけど、無理してでも食った方がいいぜ。それとも、俺がここにいるせいで食えないとか? なら、出ていこーか?」