「……本多くんは、あたしのせいで右手を怪我したんだよ」



考えるより先に言葉がこぼれてきて、自分でも突然何を言い出すのかと驚いた。

中島くんと体を寄せ合っているから、気が緩んだのかもしれない。


──────中島くん、なのに。



「本多の話は気分悪くなるからやめるって俺、言ったじゃん」



案の定、嫌そうな顔を向けられたけれど、本気で拒んでいるわけではなさそうで。



「片手使えないのに、どうしよう。本多くん、闘わなくちゃいけないのに、あたしのせいで……」



たぶん思考力が鈍ってきているんだと思う。

奥に閉じこめていた不安と後悔が溢れ出して、止まらなくなった。


吐き出さないと保てない気がした。

でも、きっと、絶対、吐き出す相手を間違えている。


わかっているのに。



「怖いよ……でも、あたしは、自分がどうなることよりも本多くんが傷付くことのほうが怖い。これから何が起こるのか分からなくて怖い」


中島くんは頷くこともせずに聞いていた。

慰めようという素振りもなく、ただじっと耳を傾けて。



「言ったろ、都合のいいことだけ信じてろって。敵方の俺に期待しても無駄だけど、事はどう転ぶかマジでわかんねぇよ」



浮き沈みのない声でそう言うと、しばらく間をおいて、ぼそりと付け加えた。



「……だって、七瀬は強いから」