お互いの呼吸をくり返す音しか聞こえない。
相変わらず体は密着したまま、たしかに、温かいなあ……なんて思いながら横目で隣の彼を見る。
眠っているのかもしれないと思っていたけれど、そんなことはなく。
あたしが見ていることに気づいて、視線を合わせてきた。
「少し眠れば?……なんて言ってもできないだろうけど、今のうち休んどいたがいいぜ。おそらく状況が動くのは、真夜中……」
「……動く?」
「たぶん今までで一番でかい抗争になる。本多が持ち堪えられたらの話だけど。……相沢さんは、見たくないもん見るハメになるかもね」
長い睫毛を伏せて、さみしい顔をする。
──────また。
中島くんのことがわからなくなった。
「中島くんは、ほんとうに本多くんのことが嫌い?」
「きらい」
はっきりとした声。
きっとそこに嘘はない。
「俺は俺の目的があって黒蘭にいる。好きとか嫌いとかの単純な感情で動いてるわけじゃない。果たすためならリスクも顧みないし、喜んで悪役にもなるからね。深川サンの言う通り、薄情だ」
自虐的な笑みをうっすらと浮かべた目の前の人物を見て、“本当” をよく知りもしないのに、中島くん “らしくない” と思ってしまった。
「それでもね、たまに自分がブレて見えることあるよ。何がしたいのか、何を考えてんのか、何を望んでんのか。突然わからなくなることが」
弱々しさを感じてしまう話し方も。
自信があるようで、どこか自分を否定している態度も。
何かを秘めているような昏い瞳の奥も。
── 今の中島くんは、少し
本多くんに似ていると思った。