解放されたかと思えば、乱暴に背中を押されて体が前のめりになり、転んでしまいそうになる。



「琉生君。僕がまた連絡するまで、この子はあの部屋に入れておいて」

「わかりました」


「絶対逃がさないでね」

「はい。もちろんです」


中島くんが再びあたしの腕を掴み、自分の方へ引き寄せた。



「この女は、本多の最大の弱みですから。だから俺にとっても、大きな利用価値がある」



無力なあたしは、今はこの状況を受け入れることしかできない。

そして祈ること。

本多くんが最後まで無事でいてくれることを。


胸の奥に焼けるような痛みが走った。



「攻め込んだのはいいとして、大丈夫かなぁ。手こずらないといいけど。こんなことに時間かけたくないし」


「心配ないです。本多がいない青藍なんか一瞬で片付きます。そもそも、戦力で固められた組織じゃないですし」



乾いた笑い声が響く。



「流生君って薄情だよね。仮にも仲間だったのにさ」

「やめてください。ごっこ遊びはもう懲り懲りなんですよ」



中島くんもまた、同じような笑みを返して入り口に手を掛けた。



「じゃあまた。 相沢萌葉のことは任せてください」