暗黒王子と危ない夜



エレベーターを降りると体格のいい男性がひとり、待ち構えていたように近づいてきた。

捲られた袖の下。黒い蘭の入れ墨が目に飛び込んでくる。

怖い……。

雰囲気に気圧される。



「琉生。青藍の連中にはバレてないんだろうな」

「へーき。心配しなくても、元はといえば本多“一人”の計画だったんだぜ」


中島くんを “ るき ” と下の名前呼んだその人は、あたしを見ると、面白そうに片頬を釣り上げた。



「これが本多七瀬のお気に入りか」

「カワイーだろ」

「ちょいと性格きつそうだけどな。まあ女は、こんくらいが丁度いい」



蘭の模様が彫られた腕が、不意にこちらに伸びてきた。

怖くて、とっさに顔を背ける。

だけどその手はあたしに触れる前に、中島くんによって振り払われた。



「この女を任されてんのは俺だ。お前は手ぇ出すな、ただじゃおかねぇぞ」



低く、ドスの効いた声。

この声色も表情も、また、全部初めて……。



掻き乱される。

本当の彼は。

“ 演じて ” いるのは

一体、どの中島くんなんだろう──。


くらり、目眩がした。