まるで他人事。
感情のない声に耳を塞ぎたくなる。



「中島くんは、本多くんの友達じゃなかったの……」

「俺そんなこと、ひとことも言ってないし。てゆーか嫌いだって最初から言ってたじゃん」


「……ずっと騙してた、?」

「人格を演じ分けるの昔から得意でさ。気持ちいいよ、みんな面白いくらい騙されてくれるんだもん」



酷い人だ。

知りたくなかった。

本多くんは、どうしてこんな人とずっと一緒にいたんだろう。



「そうそう、相沢サン、この前カラオケで襲われたでしょ。三成は学校を休んでいて、護衛はナシ。こんな好適な日はないですよって、総長様に教えてあげたのも俺なんだ〜。幻滅した? 殴ってもいいよ」


「……っ、もういいよ、聞きたくない」



本当は、まだ少しだけ期待していた。

中島くんが裏切るはずがない。
こんなことをするのも何か理由があるからだって。


でも……もう何も信じられない。



「あたしを人質にでもするつもりなの?」


「ピンポーン。深川さんは今、一時的にこの第二基地に避難してもらってる状態なんだけど。のちのち、本多にもこっちに来てもらわなくちゃいけなくて、だから相沢サンを利用させてもらう」


中島くんがスマホを取り出す。


「──あ、深川さん? 着きましたよ……はい、そちらに連れて行きますね」


電話を切り、扉に付けられた機械に、暗証番号を打ち込み始める。

やがて鈍い音を立てて入り口が開いた。


風で流れた髪を耳に掛けて、中島くんは目を細める。



「黒蘭へようこそ、相沢萌葉さん」