車に揺られ、30分ほど経った気がする。
目隠しを取られたかと思えば、そこは見覚えのない建物の前だった。
商業ビルのようだけど、看板は錆びれているし、外装も剥がれ落ちて今は使われているように見えない。
「安心しな。ぱっと見ボロいけど俺たちが日常的に使ってる場所だし、掃除も月一で業者に頼んでる」
そんな安心なんかいらない。
今あたしが求めているのは、これが何かの間違いで、中島くんがすぐにでも「嘘だよ」と、笑ってくれること……だけなのに。
「ここは黒蘭の第二基地みたいなとこ。本部からはちょっと離れてる。こう見えて地下室まであるんだ、すごいでしょ」
淡々と話を続ける中島くん。手はしっかりと、あたしを拘束したまま。
「それでね、相沢さんには、しばらくここに居てもらいたいんだ。しばらく……と言っても、多分そう長くはかからない。本多がここを見つけるまでの間だね」
「……どういうこと? 本多くんはどこにいるの?」
「んー、ちょうど黒蘭の本部に乗り込んでる頃かなぁ」
黒蘭の本部。
一体、なんのために?
「今回ばかりはあいつも命懸けだと思うよ。そこら中に罠ばっかり張られてる。どんなに賢くても絶対どこかで足元をすくわれる」