暗黒王子と危ない夜


それでも……。



「何がいい? 濃厚抹茶ラテとココナッツミルクが人気だってさ」


メニューを指差しながら楽しそうに聞いてくる中島くんを見ると、疑念を抱くのはお門違いな気がして。

たとえ知っていたとしても、なにか事情があれば、隠すのは悪いことじゃない。



「じゃあ、あたしは抹茶がいいな」

「オッケー。俺は何にしようかなー。コーラ味のコーヒみたいなの、あればいいのにねぇ」



そうやって中島くんがおどけてみせると、店員さんもくすりと笑った。



「えーっと、持ち帰りで。 濃厚抹茶ラテとココナッツミルク一つずつ、抹茶の方にアイストッピングでお願いします」


さらりとトッピングメニューを追加され、慌てて袖を引く。



「中島くんっ、」

「いーから。俺の好きにさせてよ」


にっこり笑顔で押し切られてしまった。


一杯600円もする。アイスの追加料金は150円。


いいの、かな。
ただ書店に付き合っただけなのに……。


「はい」と渡された抹茶ラテを、深々と頭を下げて受け取った。



「飲みながら歩こう。実はもういっこ、付き合って欲しいとこがあってさ」



そう言うなり、細い路地の方へと入っていく。



「こんなところ通るの?」

「……うん、そう。近道、なんだよね」