暗黒王子と危ない夜



「あ、ううん。今朝は柳居さんが車で送ってくれたよ」


三成はお見合いという大事な日だから、当然一緒にはいなかった。

あたしだけを送るなんて、申し訳ないから大丈夫だと何度も断ったんだけど、聞いてもらえず。



「高級車からひとりで出てくるの、恥ずかしかったよ……」


今朝のことを思い出す。

中島くんはワハハと笑い声を上げた。



「椎葉んちの車、目立つよなあ」

「うん、どこぞの社長令嬢にでもなった気分だった……」


「徹底的なナイトっぷりだよね。さすがだ、青藍のお姫さま」

「っ、そういうのやめてほんとに……」



お姫さまだなんて冗談も大概にしてほしい。

本気で思う。

一回倉庫にお邪魔しただけだし、そんなガラでもないし。


それに、

あたしは本多くんとは、もう──。



「あの、ね。本多くんが今何してるか……知ってる?」

「……、あー、会ってないから分かんないなあ。学校、ズル休みしてるらしいね?」



中島くんにも話してないんだ……。

1週間、ひとりで何をする気なんだろう。


もしくは、慶一郎さんにまた何か仕事を頼まれている……とか?



「心配だよね」

「うん、だね」



本多くんの話題に対する反応に違和感を覚えた。

話を逸らされたように感じるのは気のせい、かな。



本当はなにか、知っているんじゃないかと疑ってしまう。