暗黒王子と危ない夜



「よかったね、行ってらっしゃい」


笑顔で見送った。

お母さんがいなくなっても、大していつもと変わらない。家にひとりでいることには慣れている。


学校に行けば、桃香と伊代に会えるし、三成も側にいてくれる。


本多くんは──少しの間、会えないけれど。

今度また顔を合わせられた時は、笑って話せたらいいなと……思う。


みんながいてくれる日常が幸せだった。

あとは本多くんが戻ってくるのを待つだけ。

どうか無事に……。



そう願った。

大事なことを伝え忘れていることに、

あたしは気づかないまま──。