暗黒王子と危ない夜


扉をぴしゃりと閉めて周りに人がいないことを確認すると、三成は口を開いた。



「入院ってのは嘘だ。安心していい」

「嘘……? どういう意味、」

「俺のウチ、病院にも顔が利くんでね。ちょいと頼んで診断書を偽造(つく)ってもらった」



そう言って得意げに笑ってみせる。



「ほんとはもう熱も引いてるし、万全とまではいかねーけど元気みたいだぜ」

「……つまり本多くんは入院なんかしてなくて、学校には嘘ついて休んでるってこと……?」



頷く三成。

どうして……。


「もしかしてあたしに会いたくない……のかな」

「そんなんじゃねぇーよ。色々やることがあるんだと」


やること。

本多くんの話をしているときに聞くと、もはや不穏な響きにしか聞こえなくなってしまった。

たぶんお父さんが関係あるんだろうな……とぼんやり思う。



「……危ないことはしてないよね」

「知らね。俺になんも言わねーもん。けど、なんか目据わってたから近々やべぇこと起こしそうだな」



今日の三成は、ずいぶんと吹っ切れたような話し方をする。

まるで他人事みたいに。

昨日は本多くんの身を案じて、どうにか力になってあげたいと、やるせなさを顕にしていたのに……。


戸惑った。



「三成は心配じゃないの?」

「あ?」

「本多くんのこと。またひとりで何かしようとしてるんでしょ」