とっさに考えたのは、この場を乗り切るにはどうすればいいのかということ。
どんな表情をして、どんなセリフを返せば、相手を困らせずに済むのか、場の空気を気まずくさせずに済むのか。
このまま、聞こえなかったという体で「なんの話……?」と、とぼけてみせれば──
「いい加減、中入ってこいよ」
とりあえず、笑顔。
口角あげなきゃ……と思うのに、強張ってうまくいかない。
この場から逃げたいのに、今の状況ではもう不可能で。
部屋から出てきた三成は、あたしの腕を引っ張り、中へと引きずり込んだ。
手が離されて、ふと顔を上げた先で、本多くんと視線が一直線にぶつかった。
見開かれた瞳の中に、今にも泣き出しそうな顔をしたあたしが映っている。
「……なんで、」
表情をわずかに歪ませて、先に目を逸らしたのは本多くんのほう。
ほら……やっぱり困ってる。
今顔を合わせてしまえば、こうなることは予想できたはずなのに、三成は意地悪だ。
どうしてあたしがいることを、わざわざ知らせたりしたの……?



