暗黒王子と危ない夜



「真面目に話してんだ。逃げんな」


今日の三成は、やっぱりいつもと様子が違う。
冗談も軽口も一切ない。


「お前が自分から何も言わねぇから聞くけど。本当に守りたいのはどっちなんだ」


直後、心臓が狂ったように暴れた。

乱れそうになる呼吸を必死で殺した。




「答えろ。両方とかナシだからな」

「……そんなこと聞いてどうするつもり」


「守るのが多すぎるとお前が潰れる。だから、どっちか切り捨てろって言ってんだ」

「切り捨てるって……何それ。さっき、大事なものを簡単に捨てるなって言ったくせに」



話に頭がついていかない。ここから離れようとしていたことすら忘れて立ち尽くす。



「三成らしくない。……どっちか切り捨てろ、とか……」



少しだけ戸惑っているように感じられる、本多くんの声。



「勘違いすんな。どっちかを見捨てろって意味じゃねえ」

「……じゃあ何」


「お前がどうしてもエナを守らなきゃならねえ、とか言うんだったら、萌葉を守んのは俺がやるって意味だ」

「……は」