暗黒王子と危ない夜


三成が怖かったのは、本多くんが慶一郎さんを殺すかもしれないことじゃなく。

本多くんが、自分の前からいなくなってしまうこと。

大切な友達を、失うかもしれないこと……。



「周りを不安にさせたくなかったら、もっと行動わきまえろ。一番周りを不安にさせてんのはテメェ自身だって、いい加減わかれよ」


本多くんは返事をしなかった。

それでも、たぶん三成の言いたいことは十分伝わったんだと思う。



あたしは一旦この場を離れようとした。

しばらくは二人だけで話していてほしい。

そう思って静かに足を引いた、その時。



「萌葉も、お前を心配してるの知ってるだろ」



不意に名前を出されてその場に固まる。



「俺が何回も電話しても出ねぇし。萌葉のスマホから電話掛けさせたら、エナが出るし。あれ、どういうことなんだ」

「……、相沢さんが?」

「なんだよその顔。お前って萌葉の名前出すとわかりやすく表情変わるよな。たった今まで、しらーっとしてたくせに」