落胆した声。
詳しくはわからないけど、本多くんのお父さんは、慶一郎さんに殺されたわけじゃないと確信しているみたいだった。
それならば、と思う。
──もし、慶一郎さんがお父さんを殺していたなら、と仮定の話。
本多くんは今日、慶一郎さんを本当に殺していたのかもしれないということ。
実際、殺そうとしていたこと自体は否定していない。
真実が分かるまで、もしくはお父さんが見つかるまで、本多くんの中にはずっと誰に向けることも出来ない殺意が渦巻いていたのかと思うと、息が詰まりそうになる。
「あのな、七瀬」
さっきよりもやや落ち着いた声で三成が語り掛ける。
「殺す、殺される、ことなんか珍しいことじゃない、お前らの世界では日常だって分かってんだ。けど、お前はまだ完全にあっち側の人間じゃねえだろ」
「なに、あっち側って」
「もし慶一郎さん殺したとしたら、その後はどうするつもりだったんだ。殺しておいて、こっちで普通に生きようなんて、お前はぜったい考えないだろ」
「……何が言いたいの」
「お前は学校も行ってるし友ダチだっているだろ。そういうの、簡単に捨てんなっつってんだよ!」
再び沈黙が流れた。
三成の言葉が痛いほど響く。
三成は本多くんのことを大切な友達だと思ってる。
本多くんも、きっとそうだ。
三成のことを、自分と“ 対等に接してくれる”……そう、笑って話していたから。



