ふたりのあいだにわずかな沈黙が流れた。
三成も、熱で弱っている本多くんをあまり問い詰めるようなことはしたくないんだろう。
ふう、と自身を落ち着かせるようなため息が聞こえた。
「ずっと疲れてた、父さんのこと……いくら情報を漁っても何も手掛かりがないし。終わりが見えないのって辛いんだよね。慶一郎さん殺せば解放されるかなって、少しだけ、ほんとに考えた」
本多くんの口から「殺す」という言葉が出てきたことに驚いた。
あれは三成の過剰な憶測だと信じていたのに。
「慶一郎さんは、父さんがトップにいたときの若頭だった。トップの座を狙っていたとしたら、殺す動機にもなり得るかなって……。けどその読みは外れてた」
「どういうことだ? 」
「おれは、殺してない人は殺せない」
「……もうちょい分かりやすく言えねぇのかよ」
手のひらに汗が滲んできた。
「慶一郎さん、おれが持ってたナイフを奪って、自分自身を刺そうとしたんだよ」
「……は?」
「おれの手を汚せないため、かな。自分が死んで俺の気が済むなら別にそれでもいいってさ。慶一郎さんの命は、“本多さん”──おれの父親の為に在るんだって」
「……、」
「唯一の可能性に裏切られた。何の手掛かりもない、またゼロからかって、そう思うと急に気が遠くなって。……気付いたらここにいた」



