暗黒王子と危ない夜



中島くんも電話に出なかった。

どこの学校もこの時間は授業中だろうから、それがあたり前なのかもしれないけれど、そのことが不安を一層大きくする。


慶一郎さんに電話をかけたくても、三成もあたしも連絡先を知らない。



中島くんが出てくれたら、慶一郎さんに繋げてもらえるかもしれないのに。

本多くんの幼なじみである中島くんの声が聞けるだけで、安心できる気がするのに。



何回かけ直しても結果は同じ。

本多くんにも中島くんにも繋がらない。

時間ばかりが過ぎていく。


やがて諦めたように、三成がスマホをおろしたとき、タイミングを見計らったかのように着信音が鳴り響いた。


反射的に三成の手元を覗き込む。



「知らねぇ番号」

「……一応、出てみたら?」


頷いた三成がゆっくりと指をスライドさせ、「はい」と低く応えた。



それから間もなくして

「……は?」

と眉を寄せる。



短い受け答えを数回繰り返しながら、その声はどんどん強ばっていく。

いい内容じゃないことは明らかで、手のひらにじとり、汗が滲んだ。



「……すぐ行きます」


電話を切ったかと思えば、チッと鋭い舌打ちをして。


「市川さんからだった。七瀬、倒れたらしい」