「相手、本多じゃねえな? エナか?」
「……うん、そう」
エナさんが本多くんのスマホを持っているということは、ふたりは昨日も会っていたということで。
いつ、会う時間があったんだろう。
夜は慶一郎さんに病院に連れて行ってもらったと言っていたし、やっぱりカラオケ店から本多くんが真っ先に向かったのはエナさんのところだったのかな……なんて。
今はそんなことを考えている場合じゃない。
エナさんは気がかりなことを言っていたから。
──敵は思わぬところにいるかもしれない……。
「エナにスマホ持たせるとか、何やってんだあいつ」
「……元々は、エナさんのために買ったものみたいだから……」
「あ?」
「っいや。それより、三成──」
エナさんに言われたことを伝えようとして、ふと思い直す。
“ 内部のことには無防備になりがち。”
“ 敵は、思わぬところに ”
──エナさんの言葉を鵜呑みにするわけじゃない。
──三成のことはすごく信頼している、し。
「何言われたか知らねぇけど、エナの言うことには耳を貸すな。お前を脅して七瀬に近づかないようにしようとしてんだよ、全部でたらめだ」
だけどわずかな疑念が渦巻いて、結局口をつぐんでしまう。
三成が敵だなんて絶対ないと分かっているのに、“ もし ” そうだとしたら、と考えると急に怖くなって。
この事は、本多くん以外にはまだ言ってはいけない気がした。
「……本多くんがどこにいるか、エナさんも知らないみたい」
「そうか」
「早く、居場所が分かればいいんだけど……」
騙しているみたいで嫌な気持ち。
嘘はついていない、だけど、大事なことを話していない。
「んじゃあ…中島にかけてみっか」
不安そうな面持ちのままスマホを握る三成に、胸がちくりと痛んだ。



