与えられる情報の一つ一つに意識を囚われて、何か言わなくちゃと思うのに、それ以外のことを考えられなくなる。
傷付くな、平気、大丈夫……。
言い聞かせながら、左の指先でスカートの裾をきゅっと掴んだ。
「……本多くんに、三成が心配していたって……。できれば時間があるときに連絡を入れてくれたら助かるって、伝えておいて、もらえますか?」
振られた話題にはあえて触れずに返すと、エナさんは不意に黙り込んだ。
何も言わず、このまま切られるのだろうかと思った矢先。
『──そんなの、私だって心配してる』
独り言のような小さい声がぽつりと落とされる。
さっきまでの強気な声が途端に弱々しくなって、震えているようにも感じた。
『この頃、黒蘭はおかしい。何が起きてるのか私にはわからない、だって教えてくれないから。かと言って、萌葉ちゃんみたいに何も知らないわけでも、ないんだけど』
「………」
『七瀬は、力では勝てるかもしれないけど、心を先に折られたら……どうなっちゃうかな。私が言うのもなんだけどね。気をつけた方がいいよ、萌葉ちゃんも』
固まるあたしを、三成が怪訝そうな顔でのぞき込んでくる。
『誰だって、内部のことには無防備になりがちなんだよね。……敵は、思わぬところに居るかもよって、七瀬に言っておいてくれる? 私からは言えない事だから』
「……、どういうことですか?」
『私はあくまで黒蘭側の人間。これ以上は話せないよ』
言い捨てるようにして、通話は切られた。



