そういえば、本多くんの成績ってたしか……。



「本多くんて成績、あんまりよくないんだっけ」

「地頭は悪くねえはずだけどな。あいつ勉強しねえから……成績だけ見ると最下位に近い……」



成績が悪いなんてやっぱり意外だ。

だけどあれだけ多忙な生活を送っていることを考えれば、勉強する暇なんてないのも当然で。



「中学ん時もまともな生活じゃなかったから、基礎学力ついてないってのもあんだろうけど。七瀬は単純に、成績評価に興味がねぇんだ。もし留年決定したら、たぶん平気で学校辞めるぞ」

「えっ、辞めるの?」

「明るい将来のためのお勉強なんて必要ねぇんだよ。あいつの進む先はもう決まってる」



胸をぐさりと刺された気がした。
本多くんの未来にあたしがいる可能性なんて、微塵もないのだと。



「そこら辺の奴らより遥かに多くの世界見てきてんだ。色んな大人に出会って社会の汚さ知って、絶望が日常化して。そっから作り上げられた強さは計り知れねぇよ」

「……強さ、」

「頭は切れるし腕も立つ。……立派な裏社会の人間になるさ」