さらさらと揺れる黒髪に思わず見惚れてしまう。空を仰ぐように見上げる横顔が、雲のすき間から差し込んだ光に当てられて輝いた。
その数秒後、我に返る。
儚い、一瞬の夢でも見ていたかのような感覚だった。
「あっ、えっと。……渡したいものって?」
じっと見つめていたことを悟られたくなくて、口を開く。
「……これ。渡していいのか悩んだ。ほんとは今も迷ってるんだけど」
本多くんは左手を、そっと制服のポケットに差し入れた。
「軽々しく人に持たせていい物じゃないから。ましてや、相沢さんみたいな、普通の女の子に───」
ぎこちなく差し出されたのは、直径15センチほどの黒い光沢を放つ物。
「これは……?」
「折りたたみ式のナイフ。……もしもの時に使ってもらえたらと思って」



