──慶一郎さん。
予想もしていなかった名前に心臓が跳ねた。それと同時に、以前に渡された名刺を思い出す。
“ 灰田商会 代表取締役 三崎慶一郎 ”
たしか、そう書かれていたはず。
灰田という名前を聞いた時に覚えた、既知感の正体がようやく分かった。
「そういえば、表では商社の社長をやってるって中島くんも言ってた……。あれって灰田商会のことだったんだ」
「お互い、慶一郎さんに世話になってるって点では一緒なんだよな。……あの人が裏でどんなことをしていようが」
最後に小さく付け加えられた台詞が、やけに重たく響いた。
「本多くんは、慶一郎さんのことどう思ってるのかな、」
「そんなん知るかよ。ただ、好きとか嫌いとかで表せるようなもんじゃねぇだろうな。……あの人がいなかったら多分、七瀬は今、生きてないだろーし」
三成は視線を窓の外に向けたまま、ため息をこぼす。
「生活面で養ってもらってるって意味もあるけど、慶一郎さんは七瀬のストッパーの役目も担ってんだよ」



