みかんジュースを飲み終えると、外はもう暗く、時計の針は夜の8時を回っていた。
家で待ってる人がいるわけでもないから、急ぐ必要はないものの、長居し続けるのは迷惑だろうと思い帰ることにする。
「ちょい待てな、車出させる」
三成が柳居さんに連絡を取ってから、部屋をあとにした。
廊下に出て、その広さに驚く。
軽く5人は並んで歩けるくらいの横幅。ホテルの通路かと思うほどの長さ。
そして、人とすれ違うたびに深く頭を下げられるものだからいちいち反応に困った。
ひとりひとりに丁寧に返していたら、三成との距離は広がっていくばかり。
やがて振り返った三成が、あたしが来ていないことにようやく気づいてくれた。
「三成の家ってやっぱりすごいんだね。なんか異世界に迷い込んだ気分……」
「あー、一般的な家庭からはズレてっかもな」
「あたし華道って聞いてたから和風建築の家を想像してたんだけど……。すごい立派な洋館?で、びっくりした……」
あらゆる箇所に視線を送りながら関心していると、三成は「ははっ」と肩を揺らして。
「華道部屋は、また別に建物があんだよ」
「別に? すごい……。三成が花を生けるところ見てみたい、な」
「おー。いつか見してやんよ」
華やかな雰囲気の三成は、和装も似合うだろうなと想像する。
今のスーツ姿も、いつもよりも心なしか大人びて見えて、なかなか素敵だけど。



