教室の薄暗さが、あたしの不安を余計に煽る。


じゃあ、ずっと学校に?
こんな遅くまで何してたの?


そんな疑問が頭に浮かぶけれど、口にはできなかった。

制服以外、彼はなにも身につけていない。



「本多くん、カバンとかは?」

「人の家に置いてきた」

「人?……友だちの家で、遊んでたとか?」

「まあそんなとこ」



スマホを制服のポケットに仕舞いながら、本多くんは曖昧な返事をした。



「スマホずっと鳴ってたけど、……えっと、出なくてよかったの?」

「あー電話? 大丈夫。こっちはサブだし基本無視」

「サブ?」


あたしが首を傾げると、今度はジャケットの内側に手を入れて。


「そう、こっちがメイン」


取り出されたのは、さっきのものより新しい型のスマホだった。