そういえば昨日、中島くんはコーラのペットボトルをたくさん抱えて戻ってきてたっけ。

思い出して、くすっと笑ってしまう。



「お前、やっぱり笑ってる方がいいぞ。萌葉の真顔ってふつーに怖いしな」


三成が突然そんなことを言うから。驚いてまじまじとその顔を見つめてしまう。



「お前が女から遠巻きにされがちなの、たぶん、お前があんまり笑わないからじゃねえの?」

「……あたし、そんなに笑ってない?」


ショックだった。三成の言葉にはいつも嘘がないってわかっているから余計に。

真顔が怖いって……そんなに?

そういえば、桃香たちに表情が乏しいって言われたことがあるような、ないような。



「笑ってないっつーか、固いんだよ表情が。人見知りってのも関係あるかもしんねぇけど、もっと素直に笑っていいと思うぞ」

「……っ、うん」



正直に言ってくれてよかったかもしれない。自分を見つめ直すきっかけになる。



「けどお前、友ダチの前ではわりと自然体だよな。……あのギャルみてぇな見た目のふたり。思ってたより良い奴そうだし」

「うん。桃香も伊代もすごく優しいよ。大事な友達」


ふたりのことを褒めてもらえると、勝手に頬が緩む。


「あと笑顔が下手くそな奴は、友達はいても家でひとりとか、寂しい思いしてきたヤツが多いんだよな。……七瀬もだし」

「……本多くん?」



思わず聞き返した。
三成は瞼を伏せて、ぽつりと呟く。



「……七瀬の父親が行方不明になって、
もう何年経つんだっけな」