背中に回されていた手がふと緩められて、あたしの髪をやさしくほどく。

指先が首筋に当たり、自分とは正反対のその体温が気持ちいいと思った。


よく知った低めの体温にほっと安心して、残っていたわずかな力も全て抜け切ってしまう。


このまま眠ってしまいたいと思うけれど、あたしの体は相変わらず熱を持ったまま、酸素を求めて荒い呼吸をくり返すから。

早く解放されたいと、縋るような気持ちでうっすらと目を開けると、至近距離で視線が絡んだ。


──かと思えば、本多くんはすぐに手のひらであたしの視界を覆い隠して。



「見なくていいよ。大丈夫、おれに体を預けて」



その手は肌の上をなぞるように進み、ある特定の部分にたどり着く。

指先に力が込められると、分散されていた熱がそこに集中して、やわらかな刺激が走った。


「んっ…っあぁ、…」


勝手に零れてしまう声は本当に自分のものなのか、それすらよくわからない。


何が起こっているのか、ぼんやりとした頭ではもう考えられなかった。


本多くんに触れられるたびに体が甘く反応する。

それから間もなく、ぐっと熱い波のようなものが押し寄せてきて、

一瞬、どこかに流されてしまうんじゃないかという不安に駆られた。



「っ、だめ……やぁっ……」


何かにすがりたくて反射的に手を伸ばそうとしたけれど、力は入らず。
代わりに、目の前で何かが弾ける。


そのまま、プツリと糸が切れるように

あたしは意識を手放した──。