立て直そうとしても重力には逆らえず、背中から落ちていくのがわかった。


「──相沢さん…っ」


本多くんがあたしの腕を掴んだ。

それから、……一時の浮遊感。


大きな衝撃が伝わって、視界がぐらぐらと揺れる。


ただ、不思議と痛みはなく──。


はっとして目を開けたと同時、心臓がドクリと冷たい音を立てた。


ここは階段の踊り場。

あたしを抱き抱えるようにして、本多くんが──倒れている。



急いで体を起こすと、うっすらと瞼が開き、その瞳があたしを捉えた。



「……っぶな、かったね。 怪我ない?」

「あたしは、大丈夫…っ、それより本多くんは──」

「おれは平気」


そう言いながらも、右腕を抑えて顔をわずかに歪めたのを、あたしは見逃さなかった。

階段から落ちて平気なわけがない。


焦りが募る一方で、眠気にも似た、重たい感覚に襲われた。

さっきとは比べものにならないくらい体が火照って、視界は霞んで。