「ごめん。大丈夫?」
あたしだけに向けられた、心配そうな顔と優しい声音。
大丈夫という意味を込めて頷くと、彼は、あたしを襲った男を冷ややかに見下ろした。
「この子をどうするつもりだったか教えてくれる?」
相手は答えない。
体が痛むのか、起き上がることもせず怯えた表情で本多くんを見上げるばかり。
「人質にでもしようと考えたんだろうけど、そんな安易な手段がおれに通用すると思った?」
「………」
浮き沈みのないトーンで、本多くんは淡々と話を続ける。
「仮にこの子がおれの女だったとして。それに手を出すって……」
すごい度胸だね、と。
薄く笑ったあとで、本多くんが男に一歩、近づいた。
「当然、今から自分がどういう目に遭うか、わかるよね」
ぞくりとする。
──自分に向けられたものではない、その、氷のように冷たい響きに。
相手を見下ろす瞳に、わずかに上がった口角に。